副鼻腔炎の手術
薬や処置による保存療法で思うような効果が現れない場合や、再発を繰り返すケースでは手術が必要になります。手術には、ESS(内視鏡副鼻腔手術)があり、骨構造に問題がある場合は内視鏡下副鼻内整復術、難治性前頭洞炎の場合には拡大前頭洞手術を検討します。なお、副鼻腔炎に直接関係はありませんが、内視鏡下で同じような手術による治療が可能な鼻涙管閉塞症では、涙嚢鼻腔吻合術が有効です。
どの手術でも、術後の経過観察はとても重要です。再発させないためにもきちんと継続的に通院して適切な治療を受けるようにしてください。遠方から手術を受けにいらした場合には、お近くの耳鼻科で術後治療を受けられるようご紹介も行っています。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)
現在は粘膜をある程度保存してより生理的状態に近い形で治す手法が一般的になっており、内視鏡による手術ですので侵襲も少なく、お身体や機能への影響がより少ない手術が可能になっています。また、マイクロ・デブリッダーと呼ばれるデリケートな作業が可能な器具が登場したことにより、精緻な手術ができるようになっています。昔は歯肉を切開して上顎骨をノミで一部除去し、幹部を露出して手術を行っていましたので、痛みや出血、しびれ、本来の生理機能の喪失、術後嚢胞の発生などが起こりやすかったのですが、現在は肉眼では見えない部分も内視鏡で観察しながら手術可能になっているため、こうした合併症が起こる可能性が極めて少なくなっています。
ただし、内視鏡による手術は、モニターに写る画像を見ながら行いますので、手術を行う医師の経験や技量が大きく影響を与えます。当院では内視鏡による手術経験の豊富な専門医が手術を行っており、大学病院にあるものと同等の最新機器を用いることで高い技術を生かしています。侵襲が少なく、お身体への負担も大幅に軽減されているため、従来では2週間ほど入院が必要だった手術ですが、当院では日帰り手術も可能です。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)の術後
適切な術後治療を行うことで治癒も早まり、再発の可能性も低くなり、再手術が必要になるのを10%未満に抑えることができます。通院頻度は状態によって変わってきますが、目安として術後1ヶ月は毎週、2ヶ月目は半月に1回、3ヶ月目からは月1回のペースで1年以上経過観察を行います。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)の手術後には、痂皮というかさぶたの除去や鼻汁の吸引といった局所の処置を行います。これは状態を見ながら慎重に行う必要があります。また、薬を処方する場合もあります。ポリープが再発することがありますが、これは外来で摘出可能です。
内視鏡下鼻内整復術
鼻の中は左右を隔てる鼻中隔、棚状の中甲介、下甲介といった構造物があり、薄い骨や軟骨のまわりを粘膜がおおっています。鼻中隔が大きく弯曲している、あるいは中甲介の内部に空洞がある、下甲介骨の形が悪い、下甲介骨粘膜が腫れているなどがあると、鼻づまりがひどくなりやすく、副鼻腔炎の悪化や再発を起こしやすくなります。
こうした構造を改善するために行うのが、内視鏡下鼻内整復術です。鼻中隔矯正術、粘膜下下甲介骨切除術がありますが、顔への傷や鼻の形の変化が起こることはなく、出血も少ないため日帰り手術も可能です。
汎副鼻腔根本術
顔面の入りくんでいる4つの空洞を全部開放して、1つの空洞にして鼻と通じさせる形成手術(汎副鼻腔根本術・はんふくびくうこんぽんじゅつ)を行います。
眼や脳のあるぎりぎりのところまで病変を取り除くため、術者が内視鏡手術にどれだけ熟練しているかにかかっているといえるでしょう。
解剖を理解し、多数の経験を積んだ専門医がCTなどで個人の特徴を十分把握し、最新機器を使って行う手術は、従来の手術に比べて出血や合併症の危険は極端に少なくなっています。
主な特徴
- 片鼻ずつ2回に分けて行います
- 全身麻酔ではなく局所麻酔を用い、片鼻あたり90分程度で終了します
- 手術後はご家庭で安静にし、鼻の中にいれた綿球を小まめに取り替えてください
- ガーゼを抜くまでは片鼻呼吸となります
手術費用
すべて健康保険の適用されます。下記記載の金額は3割負担となります。
※下記の費用には、麻酔薬、点滴薬、医療材料等の費用は含まれておりません。
内視鏡下鼻副鼻腔手術
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅰ型(副鼻腔自然口開窓術)(片側) | 3,600点(自己負担額10,800円) |
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内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型(副鼻腔単洞手術)(片側) | 12,000点(自己負担額36,000円) |
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型(選択的(複数洞)副鼻腔手術)(片側) | 24,910点(自己負担額74,730円) |
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型(汎副鼻腔手術)(片側) | 32,080点(自己負担額96,240円) |
内視鏡下鼻内整復術
内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術)(片側) | 6,620点(自己負担額19,860円) |
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内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)(片側) | 6,620点(自己負担額19,860円) |
汎副鼻腔根本術
汎副鼻腔根本術(片側) | 32,080点(自己負担額96,240円) |
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