大腸がん
大腸がんの罹患者数は、食生活の欧米化で近年、増え続けています。早期発見と適切な治療で大腸がんは完治が望める病気ですが、早期には自覚症状がほとんどなく、大腸内視鏡検査以外での発見が困難なことから進行してから発見されることが多くなっています。そのため、がんによる死亡原因を調べた調査では、男女ともに大腸がんが上位にあります。
内視鏡検査では症状を起こさない早期の大腸がんや、大腸ポリープを発見でき、検査中の切除が可能です。大腸ポリープは放置しているとがん化する可能性がありますが、ポリープの段階で切除することで将来の大腸がん予防になります。一般的に行われている便潜血検査では、陰性でも大腸がんがある場合がありますし、陽性の場合もがんではないケースがあります。便潜血検査は確実性が低いため、陰性だから油断してしまうのは危険なのです。
定期的な内視鏡検査を受けることで早期の大腸がんやポリープを発見し、適切な治療を受けることで、大腸がんによる死亡者数は大幅に減らせると考えられています。がんリスクが上昇しはじめる40歳を超えたら、症状がなくても・便潜血検査陰性でも、内視鏡検査を受けるようにしてください。
大腸ポリープ
良性の大腸腺腫ですが、放置して大きくなるとがん化する可能性があります。内視鏡検査では発見したポリープをその場で切除する日帰り手術ができます。これにより将来の大腸がんを予防できます。
大腸脂肪腫
脂肪種は消化管腫瘍では約3%程度の発生頻度であり、ほとんどは治療の必要がありません。まれに手術が必要になるケースがあるため、経過観察を行っていきます。
直腸カルチノイド
がんに似た腫瘍で、1種のがんだと考えて治療を受けるべき疾患です。10mmを超えるとリンパ節や肝臓への転移を起こしやすくなるため、大きさで悪性か良性かを判断できます。消化管腫瘍では珍しい病気ですから、専門医の受診が重要です。
大腸憩室症
憩室は袋状に飛び出た組織のことで、自然に消えることがありませんが、そのままでは特に問題が起きません。内視鏡ではくぼみとして観察できます。約10%の方にあると報告されているほど珍しくないもので、食生活の欧米化で増えています。
憩室は炎症や出血を起こすと痛みや下血などの症状を生じることがありますし、憩室がある場合はポリープができやすいと考えられています。そのため定期的な内視鏡検査で慎重に経過観察し、生活習慣改善によって憩室を増やさないようにすることが必要です。
潰瘍性大腸炎
大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる慢性的な炎症で、原因がまだよくわかっておらず、完治に導く治療法がないことから難病指定されています。炎症自体を改善する治療が可能であり、状態が良くなっても治療を続けることで良い状態を長く保つ治療を行っていきます。症状の適切なコントロールには消化器専門医による治療が必要であり、炎症を長引かせてしまうと継続的に大腸粘膜がダメージを受けて大腸がん発症リスクを上昇させてしまいます。
最近、患者数が増えてきており、発症年齢のピークは20歳代です。ただし、高齢者が発症することもあります。難病ではありますが、適切な治療を続けてお仕事を普通に続けている方も多くいらっしゃいますし、女性で妊娠・出産した方もたくさんいらっしゃいます。お気軽にご相談ください。
直腸潰瘍
直腸下部の浅い位置に発生する潰瘍で、出血による下血で気付くことがあります。大出血を起こすこともあります。ただし、出血が起こらないと他の自覚症状がほとんどなく、気付かないこともよくあります。発症しやすいのは栄養が不足している方、あるいは高齢の方という傾向はありますが、原因はまだよくわかっていません。
大腸メラノーシス
大腸粘膜に色素沈着が起こって黒っぽくなっています。自覚症状はなく、色素沈着による悪影響は特にありません。ただし、大腸メラノーシスを起こす原因のほとんどは、センナや大黄が含まれた便秘薬の常用です。刺激が強く、それにさらされた大腸が刺激に鈍くなってしまい、便秘を深刻化させる悪運管を起こしやすいため、大腸内視鏡検査で大腸メラノーシスを認めた場合には便秘薬の見直しが不可欠です。